上流工程はつまらない・きついと言われる6つの理由
上流工程はクライアントから要望をヒアリングし、そこから要件定義~基本設計とシステムの方向性を固めていく工程であり、責任感や調整力、ビジネス理解といったスキルが求められます。
そのようなスキルに対する苦手意識がある場合、「つまらない」・「きつい」といった感情に繋がりやすくなります。
以下に、その特徴的な6つのケースについて解説します。
1. 抽象的で目に見えない作業が多い
上流工程は、要件定義や基本設計といった抽象的な作業が中心のため、開発以降のように具体的に「形として見える」成果物が少なく、達成感が得られにくい。
2. コミュニケーションが多く、技術的な作業が少ない
関係者との打合せや調整の時間が多く、エンジニアからすると技術領域の実務的なスキルを使う場面が少なく感じる。
3. 要件の調整が難航しやすい
要件定義の段階では、顧客の要望が途中で変わるケースもよくあり、その度に調整を繰り返す必要が出てくるため、非効率だと感じる。
4. 責任が重くプレッシャーを感じる
上流工程での判断や要件定義のミスは、プロジェクト全体に大きな影響を与えることがあるため、リスクが大きく責任が重いと感じる。
5. 人間関係やビジネス知識が必要
上流工程はビジネスサイドの知識や他部署との連携力、コミュニケーション力が求められるため、技術重視のエンジニアにはこうした点が負担に感じられる。
6. スピード感に欠けると感じる
上流工程はプロジェクト計画や要件調整に多くの時間が費やされるため、システム設計以降を強みとするエンジニアからすると待ち時間が長いと感じる。
上流工程に日々携わっている立場からすると、重要でかつ責任が重い難題に取り組むことで、毎回成長させてもらっていると感じています。
上流工程に向いてる人の特徴 8選
上流工程は、プロジェクトの計画や要件定義など、システム開発の方向性を決定する重要なフェーズであるため、技術力に加え、ビジネス理解やコミュニケーション力が求められます。
具体的には以下のような特徴のいずれかに該当する人は、上流工程に向いていると言えます。
1. コミュニケーション力が高い
上流工程ではクライアントや他の関係者と頻繁に対話し、相手の要望や意図を的確に引き出して整理するスキルが必要です。
そのようなコミュニケーション力に強みがある人は、上流工程で力を発揮しやすいです。
2. 論理的な思考力がある
上流工程ではプロジェクトの要件を論理的に分解し、仕様や計画に落とし込むことが求められます。
また、プロジェクトのリスクや課題についても論理的に予測し、解決策を立てる力が重要です。
そのように課題や問題を論理的思考によって解決できる人は、上流工程に必要な人材です。
3. 責任感があり、プロジェクト全体を見る視点を持つ
上流工程での判断はプロジェクト全体に影響を与えるため、責任感が強く、全体最適を考える視点を持つことが重要です。
技術面だけでなく、予算やスケジュール、クライアントのビジネス目標など、プロジェクト全体のバランスを意識できる人は上流工程に向いています。
4. ビジネスの理解力が高い
上流工程ではクライアントの業務フローやビジネスニーズを理解する力が求められるため、ITに加えビジネスの知識があると役立ちます。
業界特有の課題や、クライアント企業の目指す方向性を理解したうえで、それに適したシステム提案ができる人は、クライアントから信頼されやすくなります。
5. 柔軟な対応力がある
上流工程では要件が途中で変更されたり、検討がもれていた課題が後から出てくることもよくあります。
そのような場合でも、プロジェクトの方向性を維持しながら柔軟に対応できる人は、上流工程で必要とされる人材です。
6. 長期的な視点で計画を立てることが得意
上流工程では、1年を超えるような長期プロジェクトの全体計画を、できる限り精度高く策定することが求められます。
スケジュールやコスト、工数などが実現可能な範囲に収まるように、長期的な視点で計画を立てられる人は重要な存在です。
7. ドキュメント作成や管理が得意
上流工程では、クライアントや開発チームが共有する要件定義書や設計書などのドキュメントが主要な成果物となります。
ドキュメントを正確かつ丁寧に作成し、その品質を保持できる人は、上流工程では重宝されます。
8. 調整役が得意
上流工程では、複数の関係者の意見や要望を調整し、全員が納得できる形にまとめる役割が必要です。
そのため、様々な意見を整理し、折衷案を出したり調整したりするのが得意な人が向いています。
特に、開発側とビジネス側の橋渡し役として動ける調整力のある人は、プロジェクト全体の円滑な進行に貢献しやすくなります。
上流工程も自分一人で全てをこなすわけではなく、役割分担があります。
チームプレーをこなせるかどうかも大事な要素と考えています。
上流工程に向いてない人の5つの選択肢
上に述べたような特徴に当てはまらない、上流工程に向いてない人には、以下の5つのキャリア選択肢をお勧めします。
これらは、開発や運用など、具体的な技術に集中したい人や、責任の範囲がより明確な業務を求める人に適しています。
1. 下流工程に特化したエンジニアリング
- プログラマー/ソフトウェアエンジニア:下流工程は実装やテストが中心で、具体的に手を動かして成果物を作ることが求められます。プログラムを書くのが好きで、システムを形にする部分に喜びを感じる人には、プログラマーやソフトウェアエンジニアのポジションが向いています。
- テストエンジニア:テスト工程に特化することで、仕様に基づいた動作確認や、不具合発見などに集中できます。仕様や要件に従って手順を進めることが得意な人には、テストエンジニアが適しています。
2. インフラやネットワークに特化したポジション
- インフラエンジニア:インフラの設計や構築、運用・保守に携わるポジションは、クライアントとのやりとりが少なく、サーバーやネットワーク機器など具体的な構築作業が中心です。技術的な課題に集中したい人に向いています。
- ネットワークエンジニア:ネットワーク設計や構築、トラブルシューティングに特化することで、インフラ環境を整える技術力を磨けます。論理的なトラブル対応が得意で、安定したインフラの提供に関心がある人には向いています。
3. 技術力を追求するスペシャリスト職
- データベースエンジニア:データベースの設計・運用・管理に集中するポジションで、データの最適化やパフォーマンスチューニング、セキュリティ対策に特化できます。システムのデータ管理に興味があり、データベース技術を追求したい人に向いています。
- セキュリティエンジニア:システムやネットワークのセキュリティ対策に特化し、脅威から保護する役割です。クライアントとのやりとりが少なく、技術的な防御策を講じるのが好きな人に向いています。
- データサイエンティスト・データアナリスト:分析やアルゴリズムの作成、データに基づいたインサイト提供に専念できるポジションで、ビジネスへの興味があるものの抽象的な要件整理が苦手な人でも、具体的なデータをもとに課題解決に取り組めます。
4. 技術サポートや運用保守
- 運用エンジニア:システムやサービスの運用と保守を担当し、安定稼働を支える仕事です。日々の監視や定型作業が多く、緊急対応のスキルが求められますが、具体的な作業が明確で、顧客との交渉が少ない点が特徴です。
- 技術サポート/ヘルプデスク:クライアントやユーザーからの技術的な問い合わせに答える仕事で、エンドユーザーとのコミュニケーションを取りながら具体的なサポートを提供します。トラブル解決が得意で、比較的短期間で対応が完結する業務を希望する人に向いています。
5. 特定分野の技術コンサルタント
- アプリケーション/システム技術コンサルタント:具体的な技術分野に特化したコンサルティングで、開発フェーズやトラブルシューティングの専門家としてクライアントにアドバイスします。技術的な課題解決が好きで、そのためのコミュニケーションが苦にならない人には、特定分野に特化したコンサルタント職が適しています。
- クラウドエンジニア:クラウド環境の構築や運用に特化するポジションで、AWSやAzureなど特定のクラウドサービスに関するスキルを活かせます。インフラ設計や運用が好きで、技術の進化に対応したい人に向いています。
下流工程は作業内容が明確であるがゆえに、結果や品質に対してシビアに判断されるというプレッシャーは感じるでしょう。
まとめ
上流工程では、技術力とビジネス知識、コミュニケーション力をバランスよく発揮できる人が向いています。
特に、全体を俯瞰する力や柔軟な対応力、調整力が求められるため、開発に集中するだけでなく、プロジェクトの成長や成果を支える視点を持てる人が成功しやすいです。
一方、上流工程に向いていない人は、技術に集中できる職種や、具体的な作業で手ごたえを感じやすいポジションの方が適している可能性があります。
下流工程に特化したエンジニアや特定の技術分野のスペシャリストなど、得意分野を伸ばしつつ、モチベーションを維持しやすい働き方を模索してみましょう。